クマ問題に対するアファンの森財団の所感

お知らせ

近年、全国各地でクマの出没が大きな社会問題となっています。

ここ信濃町周辺でも、「森へ行って大丈夫だろうか」「アファンの森にクマは出るのか」と不安の声をいただくことが増えてきました。
荒れた里山を生物多様性豊かな森へと再生し、守り育てている財団として、この問題に正面から向き合い、当財団ご支援いただいている皆さまに、私たちの考えと取組みをお伝えします。
C.W.ニコルが日本の自然の素晴らしさに感銘を受けた1つに、クマの存在がありました。小さな島国でありながら北海道にはヒグマ、本州以南にはツキノワグマという2種類のクマが生息している自然があることです。
同じクマでもこの2種は大きさも性質も大きく異なりますので、ここでは本州以南に生息しているツキノワグマについてお話しします。

●なぜクマが人間の生活圏に姿を現すようになったのか

ニコルは生前、「森を再生し、人が森をきちんと手を入れ続けなければ、やがて人と野生動物の軋轢が起こる」と繰り返し語っていました。
ツキノワグマは本来、人を避けて暮らす生きものです。しかし、かつて天然林だった奥山は、広葉樹林(ドングリの森)からスギやヒノキ、カラマツの人工林へと変わり、クマが食べ物を十分に得ることのできない森が日本の森の約4割を占めるまでになってしまいました。近年ではシカの急増によって下草が食べ尽くされ、森の生態系全体はますます大きく変化しています。
また、かつて日本の里山は、人が薪を取り、炭を焼き、落ち葉を集め、森と関わりながら維持されていましたが、暮らしの変化とともに森は活用されなくなり、クマの隠れ家となるヤブだらけの森林が増えました。空き家が増えた土地では、クマたちは放置された果実の味を覚えて育ち、人の暮らしとクマの生息域が接近してしまい、人身事故につながるケースも起きています。
クマの問題は、単なる“獣害”ではなく、人と森との関係が崩れてしまったことの表れでもあるのです。

⚫︎長野県内での取り組み

今から35年以上も前から、長野県でも食べ物を求めて里にクマが出没するようになりました。ニコルは、ただ捕殺するのではなく、ツキノワグマの科学的な生態調査をすべきだと訴えていました。
ちょうど同じ頃、クマについて研究するNPOが長野で立ち上がり、発信機によるクマの行動範囲、食性の解析などの研究がはじまりました。その研究をもとに、人が暮らすエリアは怖い場所だとクマに学ばせる「お仕置き放獣」の実施や、農作物を野生動物から守る畑の電気柵に補助金がつくように行政に働きかけました。
信濃町でも、ゴミの管理を徹底し、クマを人里へ引き寄せない環境づくりが地道に進められています。

●アファンの森財団では

アファンの森は森林整備作業、生物調査などで日中はスタッフが常に森で活動をおこなっています。クマをはじめとする野生動物は人の気配のある森を避ける傾向があるので、遭遇することはめったにありません。また、間伐や下草の管理をおこなっているアファンの森は見通しが良い場所が多く、風通しも良いため、クマも人も遠くからの匂いや気配で、お互いの存在に気付きやすく、静かに距離をとることができる森といえます。
その上で、アファンの森財団では来訪者の安全のために次のような対策をおこなっています。

・森の散策は、グループ毎に財団スタッフやガイドが同行します。
・近隣でクマの出没が見られた場合は事前に散策路の下見をおこない、状況によっては森の散策を中止するなどの対応を取ります。
・万が一に備え、スタッフは緊急時対応用のクマスプレーを携帯しています。

もちろん、クマのリスクはゼロではありませんが、私たち財団にできうるリスク対策をおこなっております。

見通しがきく森

●クマの問題から考える財団の使命

私たちアファンの森財団の使命は、単に木を植えることではありません。荒れた森を再生し、人と自然、人と野生動物が共に生きられる関係を未来へつないでいくことです。
ニコルは、人と自然が共に生きる「里山というエコシステム」に深く感銘を受けました。そして当時日本で失われつつあった里山の再生に人生を捧げました。森は放置していては守れません。人が関わり、手を入れ、次の世代へ受け渡していくことで、初めて豊かな命の循環が生まれます。
私たちが目指しているのは、「クマを排除する森」ではなく、人も含め全ての生きものが生態系の一員としてその役割を果たすことができる森です。
これからもアファンの森財団は、地域や行政、研究機関と連携しながら、安全で豊かな森づくりを進めてまいります。
森と人との関係をもう一度結び直すことこそが、クマの問題を含めた未来への大切な一歩になると信じています。

どうかこれからも、アファンの森の活動へのご理解をよろしくお願い申し上げます。

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