『アファンの森、いろとりどり』 ~ハイタカ~ (2009年12月)

事務局日記

ハイタカ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハイタカ Sparrowhawk (Sparrow Hawk)

 

 

12月、2009年最後の調査をしたその日の午後に、一年間事故もなく無事に黒姫に通えた感謝の気持ちを胸にゆっくりとアファンの森を歩いていたら、元気いっぱいに飛び回るシジュウカラの群れに出会いました。

これから長く厳しい雪の季節がやってきます。次の春にも彼らの元気なさえずりを聞かせてほしいなぁと思った瞬間、か細くて高音域の金属的なツー、ツー、という声を出しながら急に動かなくなってしまいました。

 

さっきまで木々の間をまるで子供が鬼ごっこをしているかと思うくらいに動き回っていたのにどうして? と辺りを見回すと、上空にハトくらいの大きさで尾羽が長い鳥が輪を描きながら飛んでいました。

小鳥を専門的に狩るハイタカという猛禽類でした。

 

シジュウカラは、天敵であるハイタカの出現を仲間に伝えるために鳴いたのですが、それによって声を出した鳥自身が自分の存在場所をハイタカに知られないように、音源のわかりにくい周波数の高い細くて金属的な声を出していたのです。

 

上空を舞うハイタカは、何度かシジュウカラのいる木々の方に視線を向けていましたが、じっとして動かなかったので見つけられなかったのでしょう。そのまま飛び去っていきました。

どうやら今回はシジュウカラに軍配が上がったようです。

 

イラストはハイタカが次の場所に移動するために顔の向きを変えた瞬間を描いたものです。キリッとした黄色い目がとても印象的でした。

 

ハイタカが去ってからシジュウカラたちはゆっくりと動き始め、一声も鳴かずに森の奥へ消えていきました。やはり相当怖かったようでした。

 

私はついついシジュウカラの味方をしてしまいますが、ハイタカも食べなければ生きていけません。

時々狩りには成功しているのでしょうか、森の中で小鳥の羽が散らばっている光景を見かけます。

 

私が調査に入っていないときにも、きっといろんなドラマがアファンの森の中では起きているはずです。

 

 東京で通勤電車に揺られている、

 自販機の前で小銭を財布から出している、

 そんな都会で流れている自分の時間と同じ時に、

 遠く離れたアファンの森では、それぞれの生き物たちの時間が流れている、、、

 

当たり前のことなのですが、それを感じられる、あるいは考えられる余裕が自分にあるというのは、とても贅沢なことなのではないかと最近考えています。

 

今回出会ったハイタカも、ちょうど今、アファンの森の上空を飛んでいるかもしれませんね。そんな想像をするだけで、なんだか笑顔になってしまう私です。

(ヒヨ吉)

 

…………..

ヒヨ吉さん

現在、東京で仕事をする傍ら、アファンの野鳥調査に携わっていただいています。
小学生の頃から野鳥を観察していて、野鳥歴(?)は20年以上。
ニコルの手がけた専門学校の卒業生でもあります。
これまで調査や環境教育などに参画しつつ、野鳥のイラストも描かれていて、
2000年からは英国に留学し、日本では学ぶ場がない「野生生物画」を学んで2003年に帰国。
日本でもイラスト提供や個展など開かれています。
ヒヨドリが大好きなので「ヒヨ吉」。

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