「アファンの森、いろとりどり」 ~ミヤマホオジロ~ (2009年4月)

事務局日記

ミヤマホオジロ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミヤマホオジロ
Yellow-throated Bunting

 

4月のアファンは雪もほとんど消え、春の訪れを全身で喜ぶ生き物たちの姿で溢れていました。
まるで一つ一つの命が自分に与えられた命の大切さを知っているかのようでした。

そんな中でも、ミヤマホオジロは冬の厳しさに耐え抜いて春を迎えるわけですから、特にそんな思いが強いのかもしれません。

 

ミヤマホオジロは冬に日本にやってきます。
大きさはスズメよりひと回り大きいくらい(17cm)。春になるとまた北に旅立っていきます。
頭に冠状の羽を持ち、雄はレモン色と黒の二色が印象的な模様をしており、その独特な風貌から野鳥観察を趣味とする人に人気があります。

ご多分に漏れずヒヨ吉もその一人です。

 

アファンでは、1月の調査の段階から毎月ミヤマホオジロの姿を見ることができていましたが、薮で静かにチッ、チッと鳴くだけで、気をつけていないとうっかり見過ごしてしまいそうな出会いばかりでした。

しかし今回は大胆に高い梢に止まり、チュルチュルチリュリュ、ツィヒリリなどと聞こえる美しい声で鳴いていたのです。
まだ歌の練習を始めたばかりで自信がないのか、時折小声になったり、薮の中に入ったりしていましたが、きっと北の大地に到着する頃には、ヒグマやヘラジカもうっとりしてしまうようなさえずりになっていることでしょう。
そのためにもアファンでしっかり練習していってほしいなと思いました。

 

それにしても掌に簡単に乗ってしまうような鳥が海を越えて移動できるなんて本当に不思議です。
しかも地図なし。
小さな身体のどこに数千kmも渡れるパワーとナビゲーションシステムが秘められているのでしょう。

それに加えて私は、もう一つすごいと思ったことがあります。
北の大平原を映した彼らのその瞳にはアファンの姿も映っているということ。
彼らはアファンで無事に冬を越せなければシベリアには戻れませんし、シベリアが開発や戦乱などで荒れてしまえば、アファンに帰ってくることができないのです。

アファンでミヤマホオジロが見られるということは、国境を越えて2つの自然が良好だということの証でしょう。
そして、アファンで見るミヤマホオジロの姿は互いの国に無益な争いがないことを物語っていると感じています。

 

見知らぬ土地も見知らぬ人も、そんな意味では実は私たちに繋がっているといえるのかもしれません。それらを親しきものとして受け入れる優しさの重要性をミヤマホオジロたちは教えてくれています。

(ヒヨ吉)

 

………….. 
ヒヨ吉さん

現在、東京で仕事をする傍ら、アファンの野鳥調査に携わっていただいています。
小学生の頃から野鳥を観察していて、野鳥歴(?)は20年以上。
ニコルの手がけた専門学校の卒業生でもあります。
これまで調査や環境教育などに参画しつつ、野鳥のイラストも描かれていて、
2000年からは英国に留学し、日本では学ぶ場がない「野生生物画」を学んで2003年に帰国。
日本でもイラスト提供や個展など開かれています。
ヒヨドリが大好きなので「ヒヨ吉」。

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