『アファン・フォーラムのお礼』 高槻先生より

普及交流

先日の3月7日、麻布大学にて行われました、

学術交流協定記念フォーラム
「生き物のための森づくり」 ~黒姫・アファンの森での取り組み~

は、悪天候にもかかわらず、会場がいっぱいになるほど多くの方々にお越しいただきました。

足を運んでいただいた皆様、改めてお礼申し上げます。

 

アファンの森で予備調査を実施いただいていて、当日もお話しいただいた麻布大学の高槻先生よりお便りをいただきましたので、紹介させていただきます。

 

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アファン・フォーラムのお礼

麻布大学野生動物学研究室 高槻成紀

 

 3月7日はあいにくの雨でした。申し込みはあったものの、この天気ではキャンセルする人もいるのではないかと少し心配でした。でも会場は満員になり、私たちをよろこばせました。

 

 ニコルさんの話しはいつでも心に響きますが、この日は特別に感動的だったと思います。若い頃の無鉄砲ともいえる探検の話、日本に来てブナ林をみたときの感動と母国が自然を失ったことへの哀しみ、にもかかわらず目の前で日本の森が荒廃し、うらはらに母国の荒れた土地が見事な森に甦った皮肉、そうした中で誤解も受けながらアファンの森を手に入れ「格闘」してきたこと、松木さんとの出会いなどが紹介され、スライドで動植物の豊かさを見せてもらいました。最後に森で無心に遊ぶ子供の映像と、ニコルさんと子供の歌声が流れ、魂をゆさぶられるようでした。森のもつ偉大な力やその森に対して私たち日本人が何をしてきたのかといった思いが心のなかを渦巻くようでした。私は還暦になり、どうも涙腺がゆるんでかっこわるいと思いながら、涙を別のところに押しやるような感じでこらえていましたが、お話のあとの休憩時間に見ると、たくさんの人の目が赤くなっていて、ほっとしたような気持ちになりました。

 

 私はアファンの森を半年しか見ていないものの、自動センサーカメラで撮影された動物を紹介し、森の管理と植物の変化、そしてそれが訪花昆虫を呼んでリンクが甦ることを自分の目でみた感動を話しました。そして少し自分の体験や日本の国について思っていることを話しました。ニコルさんとはまったく打ち合わせもしておらず、またアプローチも違うのに、はからずも森のありかたと日本人の心のことに辿り着いたことの符合に不思議な気持ちでした。つたない話しにもかかわらず暖かい拍手を頂戴し、ありがたかったです。 

 

 しかし熱が入りすぎたのと緊張していたせいで、大幅に時間をオーバーしたことはまことに申し訳ないことでした。そのためお待ちかねの松木さんを交えての鼎談の時間を短縮しなくてはならなくなりました。松木さんは、あの個性的な、少し毒気も交えての調子で、昔の黒姫のこと、森作りの苦労話をしてくださいました。「任すよ」といわれて、適当にやればいいと思っていたら、任されるということは責任があるのでたいへんなことだよとか、いくら見ても森は見飽きることがない、木でも草でも土でも目で見て、手で触って、ときに匂いを嗅ぎ、ときに舌であじわって体感するのだという話しなどをしてくださいました。

 

 アファンの森の将来の話もしたあと、ニコルさんにそのほかの日本の森のことを伺ったら、最終的には日本人を信じているという答えでした。松木さんも「いいってことになれば、案外猿まねするもんだよ」とやはり楽観的でした。
 フロアからも発言があり、会場に一体感が溢れました。最後には割れんばかりの拍手でおひらきとなりました。

 

 野生動物学研究室の学生や麻布大学のほかの研究室の学生さんもブースで研究紹介をしてくれました。会場には人が溢れ、質問も飛び交っていました。フクロウの骨格標本が大人気でした。
 受付や案内を含めて、下働きをしてくれ、とてもうれしく思いました。よい体験になったと思います。

 

 フォーラムは大成功だったといってよいでしょう。これにアファンの森財団の皆様、ボランティアの皆様の入念な準備、麻布大学の学長をはじめ多くの事務の皆さんの協力のおかげです。あ、忘れるところでした。フォーラムの成功は参加者の共感なしにはありえません。遠いところからおいでいただき、心をひとつにして日本の森のこと、そこにすむ動植物のことを考えてくださり、熱心に聞いてくださった参加者の皆様に心からお礼申し上げます。私たちは生き物のことしかわかりませんが、じっくりと観察をして、人のおこないに対して生き物がどう応えるかを調べていく所存です。今後ともよろしくご協力いただきますようお願い申し上げます。

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