『ウェールズ、いろとりどり』 その18 ~見分け以上の難しさ~
国際交流今、こうしてウェールズにいられる喜びの一つに、実際の鳥の生息地に滞在しながら鳥を描けるということがあります。
これは、とても貴重な経験だと思っています。自分の目で観察した色ならば、パレットの上で再現色を作るのも比較的簡単ですし、自信が持てます。
一日森を歩いて夜に観察した内容を再現しながら鳥を描いていく時間は、大変ではありますがとても楽しいです。
しかし、3月以降に順次飛来しているムシクイ類と呼ばれるウグイスに近いグループの野鳥は、どの種類もよく似ていて見分けが難しく、イラストはすぐにはできません。
左の画像は、上から
モリムシクイ (wood warbler)
キタヤナギムシクイ (willow warbler)
チフチャフ (chiffchaff)
という鳥です。
図鑑になったときに皆さんが比較しやすいように姿勢を同じに作画しております。
しかし、自分で見分けができなければ描き分けもできないので、毎回目を皿のようにして観察しています。
動きがせわしないため、一度ではなかなか描き分けのポイントを見つけられないので、確認しては描き足しています。
観察で気づいたところを少しずつ直しておりましたが、ようやくなんとか全体を塗ることができました。
多少強調しないと図鑑では観察したポイントを示せないこともありますし、観察するたびにいろいろ色の濃さを調整しておりますが、観察できた違いが個体の差によるものなのか、種類の差によるものなのかを、もう一度野外で確認するのがとても大変です。
見た特徴を平均化して描き分けるという作業は、見分け以上に難しいです。
森の木々の葉もずいぶんと広がり、体の小さいムシクイ類はますます観察はしにくくなり始めています。
ただ、このよく似た鳥たちは声に非常に特徴があるために、それを頼りにまずは現れた種類を確定し、目に色を記憶させている毎日です。
(ヒヨ吉)
※掲載画像を許可なく使用したり、引用することを固くお断りいたします。
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ヒヨ吉さん
現在、東京で仕事をする傍ら、アファンの野鳥調査に携わっていただいています。
小学生の頃から野鳥を観察していて、野鳥歴(?)は20年以上。
ニコルの手がけた専門学校の卒業生でもあります。
これまで調査や環境教育などに参画しつつ、野鳥のイラストも描かれていて、
2000年からは英国に留学し、日本では学ぶ場がない「野生生物画」を学んで2003年に帰国。
日本でもイラスト提供や個展など開かれています。
ヒヨドリが大好きなので「ヒヨ吉」。
現在、日英で楽しめる「鳥の本」を製作するために、ウェールズのアファンの森へ出張中。