「アファンの森、いろとりどり」 ~エナガ~ (2009年1月)

事務局日記

エナガ
 
 
 
 
 
  
 
 
 
エナガ
Long-tailed Tit

 

 

 雪化粧をしたアファンの森。生物の気配が薄れたモノトーンでまとめられた木々の合間を歩くと、ギウ、ギウという自分の踏みしめる雪の音だけについ気をとられてしまいます。ふと、遠くで木の枝に積もった雪がその重みに耐えかねてささーっと落ちる音がすることで、自分がもっと広い世界にいることを気づかされます。

 私が普段聞いている都会の音は、乱雑でひどくやかましいため、私の耳はいつのまにかごく狭い範囲の必要な音しか拾わないようになっているのではと思うこともしばしばです。そんな音から急に解放されてこの森にくると、自分の耳の潜在能力がこんなにあったのかとうれしくなります。だから、私にはアファンの森にいられる時間がとても貴重です。
 

 そんな静かな森も、急ににぎやかになることがあります。それはエナガがやってきたとき。エナガは全長が13cmほどの小鳥ですが、尾羽が長いために数字上でそうなっているだけ。尾羽が7-8cmほどあるので、頭と胴体だけだとたったの6-7cmというたいへんかわいらしい鳥です。

 群れで行動する彼らは、ジュルル、ジュルルと頻繁に鳴きながら枝にぶら下がったり、木の幹にへばりついたり、まるで公園の遊具で子供が遊んでいるかのようなしぐさをしながら、森の中を移動して餌を見つけて厳しい冬を乗り切っています。
 

 不思議と森の静けさは比較的平気な私ですが、元気な姿で楽しませてくれたエナガが去った後の静けさはちょっと寂しいです。静寂を取り戻した森の中を再び歩くとき、またギウギウという音ばかりが耳に入ってきますが、そこにエナガの声を再び拾おうとするさきほどまでなかった自分の耳があります。
 

 エナガは私の目を楽しませてくれるだけでなく、耳で森の広さを教えてくれる大事な鳥です。
(ヒヨ吉)

 

…………… 
ヒヨ吉さん

現在、東京で仕事をする傍ら、アファンの野鳥調査に携わっていただいています。
小学生の頃から野鳥を観察していて、野鳥歴(?)は20年以上。
ニコルの手がけた専門学校の卒業生でもあります。
これまで調査や環境教育などに参画しつつ、野鳥のイラストも描かれていて、
2000年からは英国に留学し、日本では学ぶ場がない「野生生物画」を学んで2003年に帰国。
日本でもイラスト提供や個展など開かれています。
ヒヨドリが大好きなので「ヒヨ吉」。

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