【ウェールズ便り】カーディフからスオンジーへ;ローカル線で思ったこと1/2

事務局日記

 11月初頭、所用で海辺の町スオンジーまで行きました。ポツンと待っていた3両編成の各駅停車に飛び乗って1時間ちょっとの旅。アナウンスもないまま発車する電車に、愛想がないなと心の中でつぶやいたりしながら、するすると動く右手を見れば、7万6千人収容を誇るラグビースタジアムの支柱が堂々と空に延びています。大きなものだねえ。3,4分もすると車窓は都市景観から田園風景に変わり、手前には羊の群れ、遠くには栗毛色の馬が2頭のんびりと草を食んでいます。
 
 閉塞した街を抜け出した開放感でやれやれと背もたれに沈みます。のどかな車窓からは目が離せないのですが、駅毎に乗り込む人々の生きた地方の英語を黙って聴いているのも楽しいものです。次の駅では母音の長いカーディフ弁は消えます。30分してアファンの森が視界に入ってくる時分には、バリーと呼ばれる山間部の人々の、上下変動の大きいアクセントが飛び交います。アファン近郊で採炭に従事した人々独特の、胸の奥から歌うように話す英語です。子連れの若い母親達はバリー弁でファッション情報に夢中です。幼子のはしゃぎ声、たしなめる大人の声。おやつのビスケットの甘い臭い。長野駅からニコルさんの待つ黒姫や、故郷の港町呉線の道中で味わう「地方の快感」を思い出しました。
 
 列車は赤毛や金髪、銀髪、黒髪の皆を乗せてひたすらガッタンガッタン、やがてピーと鳴って終点スオンジーの駅に入りました。明治時代、日本の鉄道は英国から技術導入されました。スオンジー駅はまるで新幹線導入以前の長野駅のようで、セピア色の日本をみたような気がしました。異国でのデジャヴにちょっとおセンチになりました。
(12/14)(な)

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