【ウェールズ便り】カーディフからスオンジーへ;ローカル線で思ったこと2/2

事務局日記

カーディフを出てしばらくは牧草地が続き、やがて列車は山近くを走ります。最初はとんがり感の針葉樹の緑色の山ですが、20分ほどもするとこんもりしたブラックミルの森が見えてきます。英国内でも珍しい大規模な古代からのオークの森です。

 時は11月始め、森は紅葉途上にて茶色に赤、ところどころ朱混じりのダンダラ模様で、面白い布地を見るようでした。撮影で2度ほどこの森に入りましたが全山これオーク、一体何万本あるものでしょうか、50万平方メートルを伸びるに任せて成長したオーク達は細く不規則に不ぞろいにごつごつクネクネと自由に捩れて、それはもう一種幻想的で、一人でその場に立つには勇気が必要な雰囲気がありました。「赤い靴」にもあるように、西洋のお伽話には森の入り口で妖精が輪になって踊るという場面が良く登場し、そしてその踊りの輪はふいに消えて行きます。ブラックミルは、自然への畏敬に対する人間の深層心理をそそるような森です。

 2006年の7月にはニコルさん達と3度目の森入りをしました。「物語は書いたり演劇にはもってこいだけど、手入れがされていなから近代の森としては不健康かな」とニコルさん。なるほど。こんな思い出を手繰りながら遠くから森を眺めていました。

 ウーエルズの森博士ビル・リナードによりますと、中世の英国では、森の入り口には木の板がぶら下がっていて、森に入る者はカンカンカンと3度叩いて森番に知らせたそうです。3度たたくくらいでは森番には聞こえなかっただろうに、と思うのですが、このカンカンカンは、森に勝手に入らないというルールでもあり、黙って入らないというマナーでもあります。こういうところ、英国らしくて好きです。
(な)

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