ウェールズ訪問 その6
事務局日記【2月18日】
今日のテーマは魂に触れる、とでもいいましょうか…。
ホテルを出発後、まずはウール工場やシープドッグショーを見せてくれる牧場へ視察です。羊の国ならではという場所ですね。
ウール工場は片田舎の工場、という感じでしたがショップに並んでいる帽子やひざ掛けなどの商品は、田舎くさくない素敵なものが並んでいました。日本ではあまり見かけないようなデザインなのだそうです。
シープドッグショーはオフシーズンなので、牧場業にいそしんでいるところへお邪魔しお話を伺いました。快く迎えてくれましたが、おばちゃんが喋る喋る!営業トークが30分以上途切れないんです。半分逃げるようにして車に乗り込みました。この時なぜか「松木さん元気かなぁ」と思ったのは私だけでしょうか。
続いては、大聖堂を二つ見学です。セント・デイビッド大聖堂とスランダフ大聖堂。どちらも外観は荘厳で立派に見えましたが、中ではその神聖な雰囲気に息を呑みました。高い天井に豪華な装飾が施されていて、椅子などは木で作られています。一人で大聖堂の中を歩いて巡るとパイプオルガンも流れ、一瞬、時を忘れる感覚になりました。
私個人の感想ですが、この内部の石と木の組み合わせは違和感を感じました。石は石、木は木とそれぞれが主張していてかみ合っていない、というような感覚でした。融合してひとつの神聖な建物となっている、という気がしませんでした。
カーディフへ戻り荷物を置いて、個人のお宅におじゃましました。演奏家と私達を招いていただいての「音楽の夕べ」というわけです。
カーディフの街中の普通のお宅でしたが、部屋に何気なく置かれている装飾品はどれも立派なもので、小鳥の剥製が枝に飾られた置物や、壁が世界中のお皿で飾られたお部屋などがあり、なかなかこれだけのものがあるお宅は今では少ないのだそうです。オーナーにもとても気を配っていただいて、肌の色や言葉など関係なく迎えていただいたようで、とても嬉しく感じました。ビュッフェ形式でウェリッシュチーズやソーセージ、パテなどが並んでいる横にはおにぎりもありました。しかも、おかかとゆかりの2種類。久し振りにご飯を味わいました。いらっしゃっている演奏家の奥様が日本の方だそうで、その方が作ってくれたのだそうです。デザートはウェリッシュケーキとウェールズと日本の家庭の味を楽しめました。
このウェールズには古くから「音楽」があったそうです。
“不変”と”変”の織り成すものが音楽。
“不変”とは大宇宙、”変”とは人や楽器。
6世紀の時代から、楽器と人の声とで音楽が奏でられたのだそうです。ライヤーという弦楽器の周りを、まるでハチが舞うような声で詩が詠われます。日本の詩吟のような感じです。
なんとも哲学的で、不思議な世界でした。
家族をなくした詩、二頭のイヌの詩などを聞かせていただきましたが、楽器自体の音色は軽いものでしたがその雰囲気はどっしりと重く、悲しい感じがすると同時に、やさしさや強さ、広さを感じました。
古典音楽だけでなく、近代音楽も演奏いただきました。バイオリンとギターのような弦楽器とで披露いただいたアイリッシュ、スコティッシュ、ウェリッシュ音楽、少し飛んでスペインの音楽はみみなじみのあるもので気楽に聴けました。シンガーは伝統音楽で音楽療法を実践されている方で、古典音楽だけでは気持ちが重くなるので、近代の耳慣れたものや明るい音楽も混ぜてくれた(特にスペインの音楽はお祝いがあるようなときに歌われるものだそうです)のかなと今になって想像しています。
大聖堂と伝統音楽とで心揺さぶられた感じを味わいつつベッドに入ったとたん、すぐ眠ってしまいました。 (か)