【ウェールズ便り】カーディフ湾エリア

事務局日記

 100年前には石炭と港湾労働者でひしめいたカーディフ湾ですが、石炭衰退後は一気に寂れてしまいます。あたり一帯は長い間「汚い・危険・貧困」の象徴に甘んじていましたが、1980年代、モダンで明るいイメージを求めてカーディフ市は起死回生の港湾開発事業を興してイメージアップを図りました。その結果、現在ではお洒落なレストランやカフェ、5星ホテルや文化ホールなどが立ち並ぶ、カーディフの大事な「顔」となりました。

 ミラニアムセンターの斜め前に、クラフトインザベイの建物があります。このクラフトインザベイの付近はかってのビュートドックの真っ只中でしたが、クリスタルで明るい建物だけを見ていると、石炭とかその様な過去のイメージは全く残っていません。対して石炭取引所や旧銀行などの趣のある当時の建物は、外観はそのまま残して再生利用をしてあります。クラフトインザベイには、ウエールズ政府公認のクラフトマン(ギルド)の現代工芸作品が展示販売されています。ギルドのメンバーになるには2年に一度の厳しい技術審査が行われます。家具、木工、陶芸、革製品、ジュエリー、タペストリーと、いずれも素晴らしいクラフトマンシップ・手仕事の妙を極めた作品ばかりで、お城で観る技術の美しさとは全く異なる美しさで、訪問者を魅了しています。

 

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クラフトインザベイ

モダンな作品が妍を競います。

 

 

 

 

 

 カーディフ湾は、マリーナ整備に伴い埋め立てされて淡水湖となりました。埋め立てに当たっては、
1.酸素の供給機を水中に設置する
2.水鳥の干潟は残す
という自然環境保護配慮がされています。

 

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カーディフ湾湿原地帯の空撮です。周辺は遊歩道となっています。
アートと一体になって自然環境保護を訴えます。

 

話は飛びます。
 英国の南極探検隊の通称スコット隊といえば、ノルウエー隊に先んじられた上に隊員も全滅して、英国史上でも名高い悲劇なのですが、この探検隊は今日も英国人には絶大な人気があります。このスコット隊は1910年、カーディフの港から南極を目指して旅立っています。一行が死への旅立ちとなる前に最後に泊まったホテルもカーディフ市内に健在です。スコット隊が全滅した理由は多々あるのですが、極寒の吹雪の中で立ち往生して食料が尽きても、犬そりの犬達と作業用のポニーを頑固として食料にしなかったことにあると云っても過言ではありません。犬と馬は英国人にとってはお互いに体の一部のような間柄です。厳しい状況下に苦楽を共にしてきた仲間でもある彼らを、自分達のサバイバルのためだけに殺すことが出来なかった事が、全滅の見過ごせない遠因として語り継がれています。

 

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スコット大尉を模したアート
後ろに見えるのはカーディフベイのビジターセンターです。

 

 

 

 

 

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ロース公園のスコット隊顕彰碑
白鳥達が優雅に泳ぐ池の中に建っています。

 

 

 

 

 

 偶然とはいえ、ここでもまた偉大な父と子の業績がありました。石炭の富と南極探検。どちらも時代 の産物なのですが、この二つが、たとえ偶然といえども、最終的には現代に生きる私たちに進むべき道を示しているように思えてならず、仏教徒の私は、今回のロンドンウエットランド訪問に、不思議なご縁を感じています。カーディフ→ビュート候2世とスコット大尉→3世とピーターさん→文化保護と野鳥保護、というふうに覚えておかれますと、2つの訪問地が更に一つにリンクして、訪問の意義も感慨も一層深くなられるでしょう。(続く)

 

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旧石炭取引所
かっては熱狂的な取引が行われた場所です。
英国初の億単位の小切手が切られてことで有名です。
現在は、高級マンションに改造中。

 

 

 

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旧灯台船
この船が湾沖に停泊して、膨大な数の船の安全を確保しました。
現在は船教会となり、カフェもあります。再利用の一つです。

 

 

 

 

 

写真と文   ルイスサール奈都世   CELT21 UK

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