【ウェールズ便り】ウエールズ文化 1

事務局日記

 ヒースロー空港から高速道路で約2時間(順調なら)走ると、イングランドとウエールズの国境となります。国境越えでは、川幅なら世界第2のセヴン川のつり橋を渡るという、ドラマティックな経験が出来ます。橋の始まりと終わりは約7kmあります。川幅の大きさ、潮が戻るときのスピードと流砂のお陰でウエールズへのローマ人の侵攻が遅れた、という歴史にも影響があった川です。

 この橋を渡ると、公共の表示は全て英語とウエールズ語の2重表示になります。4カ国の連合国の英国では、英語は公用語で、イングランドの以外のケルト3カ国にはそれぞれの言葉があります。同じケルト系でもスコットランドとアイルランドは同系統の言語、ウエールズ語はブレトン系言語なのでフランス系のケルト語と通じあいます。英語とウエールズ語ですが、影響しあって今日の英語があるとは云うものの、ウエールズ語には母音が7つにdd、llなどの英語には無い綴りなど、2つの言葉は全く言語系統が異なるものです。大雑把ですが、中国語と日本語のような違いがあると思ってください。しかもウエールズ語は「現役で使われている欧州で最も古い言葉」です。英語の常識でチャレンジして失意の人となるよりは、むしろその違いを耳で聞いて楽しみ、難解な綴りの発音を推測するなどして、「英国の中の異国」を楽しんでください。

 

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ウエールズ語と英語の二重表示
上が英語、下がウエールズ語です。
上から順に、トイレ、クーパー広場、市民会館、国立博物館です。

 

 

 

 

 ウエールズ語は歌うような言語といわれています。300万の人口比にして約4%がこの言葉を第一言語として日常で話していますが、99年に発足した独立議会政治は言語教育に力を入れるようになり、現在では多くの子供達がバイリンガルです。(大人はそうはいきませんが)。ウエールズでは、言葉の芸術が盛んです。歌や音楽、詩歌の朗読には並々ならぬ情熱があり、吟遊詩人の元は、ケルト人とイングランド人の抗争を弾き語ったウエールズ人にあるといわれています。言葉の祭典「アイステスフォッド」なるものが一年に一度開かれ、詩歌の作と朗詠のチャンピオンが最高の栄誉とされます。ところで、英国4カ国の人々のキャラクタースタディは面白いですよ。なにかにつけては民族の血を枕詞に使うのです。「我々イングランド人はそんな事では動じないのだ」とか、「議論ならまかせとけ、俺はスコトランド人だ!」とか、「歌がうまいってか?当たり前だ、俺はウエールズ人だ」とか、「俺はアイリッシュだ。文句あっか!」と自分を明るく名乗って相手をけん制すします。でも、なんだかんだといいながらもとどのつまりは仲良くビールを飲む辺りが面白い。こういうやり取りをしながら日常のちょっとしたぎすぎすを円滑にさせます。異人種間の長い抗争や、為政者や文化の軋轢などかい潜ってきた民族ならではの強さでもありましょう。

 

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インドアマーケット
カーディフ市の庶民市場です。

 

 

 

 

 

 ウエールズの国旗は、サクソン人との抗争伝説による「ケルト人を示す赤いドラゴン」をメインキャラクターにしています。16世紀のウエールズ人の血を引く王朝・チューダー家が戦場で使ったことに由来します。街中いたるところにこのドラゴンがいます。このデザインを見ていると楽しいです。街の中央には1891年出来たインドアマーケットがあります。当時の外国人労働者を対象とした庶民市場が始まりで、今でもエキゾチックな野菜や、豚の頭などを売る肉屋、鮭をドカンと売る魚屋などがあります。この魚屋では南ウエールズ名物のアマ海苔も売られています。(続く)

 

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名物のケーキが山のように売られています。
バターを塗って食べますと、紅茶にとても良くあいます。
ついでに花も買ってポットの横に飾れば、英国ムード満点になります。

 

 
写真と文 ルイスサール奈都世  CELT21 UK

 

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