キビタキ
Narcissus Flycatcher
(写真:ヒヨ吉)
7月になると、調査中に遭遇するカやアブなどの虫も増えて、実はなかなか大変です。
それに鳥たちの多くは、この時期になると子育てが終えるためになわばりを確保する必要がなくなり、春に聞いたような「森全体から湧きあがってくるようなさえずり」を聞くことはもうありません。
調査期間としては、ちょっとさびしくて、悩ましい時期でもあります。
しかし、まだ元気にさえずりをしている鳥がいました。それはキビタキです。
雄には、名前の由来でもある黄色い羽毛があり、それはそれはすてきな容姿をしています。
一方、雌は卵を抱くために地味な姿をしています。
地味な雌に出会った人間界の女性陣からは「雄だけきれいなんて、不公平ねぇ」なんてことを聞くこともありますが、生活のスタイルを聞くと、これがベストカラーだということが、よくわかります。
ですから、私はキビタキの雌に出会ったときには雄と同じように「きれいな羽だな」と思いようになりました。
ところで、なぜキビタキは他の夏鳥よりも長い期間をさえずるのか、私はとても不思議でした。
すると、ある人から「キビタキは一夏に二回繁殖をすることがあり、縄張りを維持する時期が他の夏鳥よりも長いからだよ」と教わったことがあります。
7月の調査でもアファンの森では、何度もさえずりを聞きましたから、一夏に二度目の子育てができるだけの環境が整っている可能性がありそうです。
来年の調査の課題になりそうです。
何はともあれ、子育てを二回すれば、その分アファンの森がふるさとになったキビタキがたくさんいるということ。アファンの森が大好きな私には、キビタキのヒナが一羽でも多く巣立っていくことは、この上ない喜びです。
今回は虫に悩まされながらのアファンの森の鳥類調査ではありましたが、そういう虫たちがたくさんいるからこそ、キビタキはその虫たちを餌に子育てをすることができる(しかも二回かもしれない!)ことを忘れてはいけないと森を歩きながら感じました。
森に虫がたくさんいることと、鳥がいるということは、「自然界の生き物の命の関係」でつながっています。月に一度しか森にこない私が虫がいることを煩わしく思うこと自体がおかしいことなのです。
アファンの森を「生活の場」とする全ての生き物たちに対して、今まで以上に謙虚な気持ちで接し、礼を尽くしながら見つめていきたいと思います。
(ヒヨ吉)
※事情によりイラストはお休みします。ごめんなさい。
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ヒヨ吉さん
現在、東京で仕事をする傍ら、アファンの野鳥調査に携わっていただいています。
小学生の頃から野鳥を観察していて、野鳥歴(?)は20年以上。
ニコルの手がけた専門学校の卒業生でもあります。
これまで調査や環境教育などに参画しつつ、野鳥のイラストも描かれていて、
2000年からは英国に留学し、日本では学ぶ場がない「野生生物画」を学んで2003年に帰国。
日本でもイラスト提供や個展など開かれています。
ヒヨドリが大好きなので「ヒヨ吉」。