キジバト
Oriental Turtle Dove
(写真:ヒヨ吉)
私はけっこう雨男。
しかし、どういうわけか今年1月から始めたアファンの森の鳥類調査では晴天に恵まれていました。
でも、効力もついにここまで? 8月の調査では初めて重い雲の空の下での調査となりました。
幸い雨は降らなかったものの、霧が時折周囲を覆いました。
歩きなれたいつもの調査コースであっても、ちょっとした違いで、新鮮な驚きに満ちた風景に変わっていました。
季節柄、あまり鳥が鳴かないので確認できた種類は少なかったのですが、霧の中から聞こえる鳥たちの声がいつもより澄んでいて、しかも遠くまで響いているように感じられました。
そんななかで不思議と私の心に残った声の主はキジバトでした。
霧の中から聞こえてくるキジバトの声は、なんだか心の深いところに穏やかに染み込んでいく、とても神秘的なものでした。
大都会の真ん中にもいるごくごく普通の鳥ですし、それこそ東京での毎日の生活でも聞くことのできるキジバトの声が調査で印象深いものになるとは、実は自分でも驚きでした。
いつも歩くアファンの森の小道で、いつも聞くキジバトの声。
それが、ちょっとした状況の違いで自分の記憶の中でなにものにも代えがたいものになるのですね。
そんなことのあった8月の調査以降、なんとなくキジバトが気になるようになり、通勤時に気をつけて観察するようになったら、なんと自宅の庭でキジバトが巣作りをしているではありませんか。
こんな偶然があるんですね。この出来事によって、都会とアファンの森は別々のものではなく、より深いつながりをもったものに変化しました。
街の中でキジバトを見ると、アファンの森を思い出すようになり、日々の生活に彩りが添えられたように感じています。
こういうのは、とても贅沢なことだと思います。
アファンの森がまた一つ、地球で人間がずっと生き続けるために覚えておくべき自然の敬い方を教えてくれたような気がしました。
物理的な距離はどうしても遠いアファンの森ですが、心の中ではもう身近な存在です。
キジバトとアファンの森に改めて「ありがとう」です。
(ヒヨ吉)
※事情によりイラストはお休みしています。ごめんなさい。
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ヒヨ吉さん
現在、東京で仕事をする傍ら、アファンの野鳥調査に携わっていただいています。
小学生の頃から野鳥を観察していて、野鳥歴(?)は20年以上。
ニコルの手がけた専門学校の卒業生でもあります。
これまで調査や環境教育などに参画しつつ、野鳥のイラストも描かれていて、
2000年からは英国に留学し、日本では学ぶ場がない「野生生物画」を学んで2003年に帰国。
日本でもイラスト提供や個展など開かれています。
ヒヨドリが大好きなので「ヒヨ吉」。