『アファンの森、いろとりどり』 ~マミチャジナイ~ (2009年10月)

事務局日記

マミチャジナイ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マミチャジナイ(雌)
Eyebrowed Thrush

 

 

10月は9月の蚊の襲来がウソかのような快適な調査でした。たった1ヶ月の違いで生き物の数にこれだけの変化があるのですから、自然は存在そのものがドラマチックだと感じます。

 

今回の調査ではちょっと嬉しいことがありました。

それはマミチャジナイという私の大好きな鳥に出会えたのです。マミチャジナイは、春にアファンの森でさえずっていたクロツグミと同じ仲間(ツグミ科)で、脇腹が淡い橙色、眉にスッと白い線が入っているのが特徴です。

日本へは春と秋にシベリアと東南アジアを行き来する途中に訪れる短期間だけ見られます。

 

実は、初夏の調査でアファンの森にミズキの花がたくさん咲いているのを見てから、今年の秋はアファンの森でマミチャジナイに会えることを夢見ていました。

木の実が大好物のマミチャジナイ。ツグミの仲間がよく訪れる秋のミズキの実りを見逃すことはないだろうと考えていました。

 

ミズキは全国各地に自生する木で10月頃に濃い紫色の実をつけるため、虫の少ない時期に移動中の渡り鳥たちにはとても重要な食べ物になっています。

 

私は2本のミズキに注目していました。しっかりした枝ぶりで、春にたくさんの白い花をつけていましたので、きっと秋にたわわに実をつけるだろうと、そのときから秋の実りをずっとワクワクしながら待っていました。

今回、まさにその木の一本にマミチャジナイが来ていたので、自分の予測が的中したことが本当に嬉しかったです。

 

鳥を守るために繁殖場所や越冬地が保護区に設定されることはありますが、通過する場所は保護の手が差しのべられることはありません。

しかし、このマミチャジナイのような長距離を渡る鳥の保護するには、渡りの途中で栄養補給のために立ち寄る場所の自然もよくないと、旅を続けられません。

 

自然とは生命誕生のゆりかごでもあり、厳冬を乗り切る暖炉のような存在であると同時に、そこを宿場町のように訪れる生き物たちにも大切な場所です。

アファンの森もそんな観点からも見つめることが必要だよ、とマミチャジナイは教えてくれているように感じました。

(ヒヨ吉)

 

………….. 
ヒヨ吉さん

現在、東京で仕事をする傍ら、アファンの野鳥調査に携わっていただいています。
小学生の頃から野鳥を観察していて、野鳥歴(?)は20年以上。
ニコルの手がけた専門学校の卒業生でもあります。
これまで調査や環境教育などに参画しつつ、野鳥のイラストも描かれていて、
2000年からは英国に留学し、日本では学ぶ場がない「野生生物画」を学んで2003年に帰国。
日本でもイラスト提供や個展など開かれています。
ヒヨドリが大好きなので「ヒヨ吉」。

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