【事務局日記】緑のダム
事務局日記今から10年前の2000年1月23日、徳島市で国の可動堰計画の是非を問う
住民投票が行われ、投票率55%、可動堰建設に反対95%という結果で、
国が計画した可動堰建設計画が白紙になりました。
この住民投票から丸10年になるのを記念して行われたイベント「10年目の123」に
先週の土曜日行って(個人的に)きました。
この住民投票の後、徳島の人たちは可動堰計画にかわる代替案づくりを目的とした
団体を立ち上げ、専門家や学識者グループに呼びかけて住民と共同で2つのテーマ
の調査と研究をはじめます。
その1つがコンクリートのダムに代わる「緑のダム」構想でした。
アファンの森を訪れた事のある人なら誰もが感じていると思いますが、森の中の土は
とてもやわらかく、歩くとふかふかしてとても気持ちがいいものです。
森に降った雨は木や草の葉っぱが一旦受け止めて、流れる雫は木の幹や草の茎を伝い
厚い腐葉土の層に静かに浸みます。そして、土と木の根の間にできたわずかなすき間、
ミミズの通り道、さまざまな小動物がつくる土の中のトンネルを通り、ゆっくり時間をかけて
伏流水となり川へと流れます。
こうした機能が「緑のダム」と言われています。
当時の吉野川流域の森林の人工林率は70%。その殆どは手入れが十分ではなく、下草も
生えないスギやヒノキの林の中では、一旦大雨が降ると土の表面が川のよう洗い流され、
林内はまるで河原のように石ころがゴロゴロ転がっているというおそろしい状況が、いたる
ところで見られました。
徳島の人たちは混み入った人工林を間伐し、「緑のダム」機能を回復させる事がコンクリート
のダム(可動堰)に頼らない自然の力を活かした治水方法であると考えたのです。
3年に及ぶ調査研究の結果は、2004年に報告書としてまとめられ徳島市に提出されました。
(現在、可動堰計画は白紙のままで完全中止には至っていません)
イベント翌日の昼、私が乗った徳島空港発羽田行きの飛行機の窓の外には、源流から194kmの
旅を終え、ゆったりと大きく海に向かって口を広げる美しい吉野川の姿がありました。
もしもあの住民投票がなければ、今頃は江戸時代に作られた美しい石積みの第十堰を壊して、
あの長良川河口堰よりも大きな可動堰をつくるための工事が行なわれていたはずです。
こうして美しい川の姿を見られることがとても幸せであると実感しました。
機内では吉野川が良く見える座席に私を案内してくれた客室乗務員の方がにっこりと微笑んで
いました(気のせいか...)。感謝です!
越流する第十堰(下堰)で魚を狙うサギ
河口から15km上流に位置する第十堰にはたくさんの魚がのぼってきます。
横一列に並んで魚を狙うサギ、空中からダイブして魚を捕らえるミサゴ。泳いだり、魚を釣ったり、カヌーをする
川ガキたちの姿も見られます。
(写真提供:南健二)
江戸時代につくられた第十堰(上堰) 地元の人たちによるお茶会の催し
(写真提供:NPO法人吉野川みんなの会)
水が少ない時期は上の写真のように堰が姿をあらわします。
今から約260年前に地元の人たちが石を切り出してつくったと言われるこの堰、
現代も機能し続ける日本最大の唯一無二の美しい堰です。
もっと知りたいという方はこちらをどうぞ。
(事務局 堤)