『アファンの森、いろとりどり』 ~キバシリ~ (2010年1月)

事務局日記

キバシリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キバシリ
Treecreeper

 

 

 

2010年の調査が始まりました。

去年1月にアファンの森にやってきたときと同じように、

真っ白に雪化粧をした森の中はしんと静まりかえっていました。

一年間様々な鳥との出会いをさせてくれた大切なアファンの森。

大きく深呼吸をして、今年もよろしくお願いしますと森に挨拶をしました。

 

 

この時期の鳥の調査は木々の葉が落ちて鳥の姿を確認しやすくなりますが、

発見のきっかけはやはり声。

じっと耳を澄ましていると、鳥たちの小さな会話が森の奥から聞こえてきます。

 

 

カケスやシジュウカラのようにはっきりと鳴く鳥はいいのですが、声の聞き取りにくい鳥もいます。

キバシリ(漢字で書くと「木走」)もその一つ。

彼らは小さな鈴が震えているようなか細い声で「ツーツリリリリ…」と鳴くだけです。

「キバシリが出るかもしれない」

という意識で森の中を歩かないと気がつかないこともしばしばですが、

彼らの見つけにくさはこれだけではありません。

樹皮にそっくりな模様と色の鳥なので、声がしてもなかなかすぐには見つからないのです。

日本では山地の森林地帯に生息していて珍しい鳥ではありませんが、

発見にはコツもあるのでバードウォッチャーの間ではひそかに人気のある鳥です。

2009年の調査では春の一時期と秋から継続的に観察されていますが、

夏には確認できていないので、現時点では主に越冬地として森を利用しているという予測です。

 

 

運良く発見できたときには、木の幹をチョンチョンと登りながら、

やや下に曲がった嘴を巧みに使って

樹皮の割れ目に潜む小さな虫やその卵などを食べている姿を観察できます。

以前ご紹介したゴジュウカラも木の幹を動き回りますが、

彼らのように音を立てることはなく、静かに餌探しをします。

ゴジュウカラが「やんちゃ坊主」ならば、キバシリは「おしとやかなお嬢様」というところでしょうか。

どちらも個性豊かな愛すべきアファンの森の住人です。

生き物の世界も人の世界も、自分らしく生きることが大事です。

 

 

キバシリはユーラシア大陸に広く分布しており、

ニコルさんの故郷である英国の公園にも生息しています。

私の英国留学中もキャンパス内で普通に観察することができました。

以前紹介したウソは日本と英国のもので色が異なっていますが、キバシリは驚くくらいに同じです。

遠い英国に来て、慣れない生活が続いたためか、ふと気付くと肩に力が入っていましたが、

日本とまったく同じ色をしたキバシリに会えると自然と心が和んだのをよく覚えています。

 

 

今まで私は鳥たちに本当に助けられてきました。

そろそろちゃんと恩返しをする方法を考えなくてはと思い始めている今日この頃です。

 

(ヒヨ吉)

 

…………..

ヒヨ吉さん

現在、東京で仕事をする傍ら、アファンの野鳥調査に携わっていただいています。
小学生の頃から野鳥を観察していて、野鳥歴(?)は20年以上。
ニコルの手がけた専門学校の卒業生でもあります。
これまで調査や環境教育などに参画しつつ、野鳥のイラストも描かれていて、
2000年からは英国に留学し、日本では学ぶ場がない「野生生物画」を学んで2003年に帰国。
日本でもイラスト提供や個展など開かれています。
ヒヨドリが大好きなので「ヒヨ吉」。

 

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