カケス
Jay
2月、アファンの森に1m以上積もった雪。
前夜に新たに降った柔らかい雪のせいなのか、それとも私の足が雪に慣れていないせいなのか、予想以上に足が雪に沈み、調査ルートをいつものようには進めませんでした。60kgにも満たない痩せた私ですがスノーシュー(外国のカンジキ)を履いてもそれはあまり変わらず、今回の調査はとても難儀しました。
そんな状況で必死に歩いていると、
「ピェー、ピェー」とノスリという猛禽類の声がしました。
声が一カ所から近くで聞こえます。
猛禽類が大好きな私は必死に探しますが、全然見つかりません。あれ、もう飛んでいったのかな?いえいえ、ノスリはカラスくらいもあるタカです。見過ごすわけがありません。でも、いない…う~ん。
しばらくすると、ジェー!と濁った声が頭の上から降ってきました。
カケスでした。
カケスはカラスの仲間で全長は30cmほど。ちょうどハトくらいの大きさです。
体は薄い茶色の羽毛ですが、翼に青と黒の美しいアクセントがあるのが特徴です。
カラスの仲間全般に言えることですが、カケスは非常に賢く、聞いた他の鳥の声を真似ることができるのです。その習性を私は知っている筈なのですが、ついつい騙されてしまいます。
カケスには、もう一つ驚くべき習性があります。食べ物を地面や木のウロ、倒木の中などに隠すという貯食と呼ばれる行動で、研究家によるとカケスは隠した場所をほぼ100パーセント覚えているそうです。
秋には大好物のドングリをたくさん隠すのですが、いくつかは掘り返されずにそのままにされるらしく、春にその種からは元気な新しい芽がでるそうです。
研究家はそれを「カケスが種のありかを忘れたから」と考えているようですが、私にはどうも違うような気がしています。頭のいいカケスのことですよ、きっとわざと掘り出さなかったのだと私は思っていま
す。
実をつけてくれたドングリの母樹への感謝と自分自身の子孫のために、わざと掘り返さずに森作りをしているのだと。そのくらいのことは考えそうな顔をカケスはしています。
子どもの頃に読んだ昔話に出ていた、生き物たちの会話がわかる「ききみみずきん」を使って、カケスに本当のことを聞いてみたいものです。
(ヒヨ吉)
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ヒヨ吉さん
現在、東京で仕事をする傍ら、アファンの野鳥調査に携わっていただいています。
小学生の頃から野鳥を観察していて、野鳥歴(?)は20年以上。
ニコルの手がけた専門学校の卒業生でもあります。
これまで調査や環境教育などに参画しつつ、野鳥のイラストも描かれていて、
2000年からは英国に留学し、日本では学ぶ場がない「野生生物画」を学んで2003年に帰国。
日本でもイラスト提供や個展など開かれています。
ヒヨドリが大好きなので「ヒヨ吉」。