『アファンの森、いろとりどり』 ~ニュウナイスズメ~ (2010年4月)

事務局日記

ニュウナイスズメ

 

 

 

 

 

 

 

 

ニュウナイスズメ
Cinnamon Sparrow

 

 

 

この冬、調査で黒姫を訪れるたびに雪でしたが、

まさか4月の調査まで雪が降るとは思いませんでした。

アファンの森事務局の皆さんには

「ヒヨ吉さんが雪を呼んでいるみたいですね(笑)」

と言われ、ただの偶然ですよと返していましたが、

さすがに4月まで雪が降れば、そうなのかなーと思ってしまいます。

 

うっすらと雪化粧したような森のなか、

予想外の寒さに震えながら調査をしていた私ですが、

鳥たちもその寒さに驚いていたのか、開始当初はまったく鳥が現れなかったのでした。

 

こんなことが自然にはあるのですね。

今日という日が、昨日とも明日とも違う、かけがいのない時間であることを、

この雪から教わったような気がしました。

 

太陽が出ると雪も消えて少しずつ気温が上がり、鳥たちにも動きが出てきました。

すると夏鳥であるニュウナイスズメの声が森から聞こえてきました。

 

ニュウナイスズメはその名の通りスズメの仲間ですが、

本州では都会などにはいなくて、高原などを好んで住処にしています。

私がニコルさんの学校に入学した1990年代には

アファンの森でニュウナイスズメを見ることはできず、

観察するには一つ山を越えて戸隠まで出かけなくてはなりませんでした。

 

なぜニュウナイスズメがアファンの森で見られるようになったのか、

本当のところはニュウナイスズメに聞いてみないとわかりませんが、

おそらく以前よりも森の中に巣を作る環境が増えた(キツツキが木に開けた巣穴など)

ことが大きな要因ではないかと考えています。

 

今、目の前にいる鳥だけがその鳥の命なのではなくて、

ほかの鳥とのつながりをもった命であることを想像して観察してごらん。

きっと鳥たちはいろんなプレゼントをしてくれるよ。

 

私が小学生の頃に、野鳥の観察の方法を教えてくれた恩師の言葉です。

以来、鳥を通して、森の中の生き物たちの関係に目を向けることを心がけています。

ニュウナイスズメの出現を、ただ新しい種類が増えただけにはせず、

森に新しい生き物のつながりができたことなのではないかという視点に立ってみると、

森の価値というものをまた別の角度から見つめるきっかけになります。

 

「自然を大切にする」ということは、こういうことかもしれませんね。

 

(ヒヨ吉)

 

…………..

ヒヨ吉さん

現在、東京で仕事をする傍ら、アファンの野鳥調査に携わっていただいています。
小学生の頃から野鳥を観察していて、野鳥歴(?)は20年以上。
ニコルの手がけた専門学校の卒業生でもあります。
これまで調査や環境教育などに参画しつつ、野鳥のイラストも描かれていて、
2000年からは英国に留学し、日本では学ぶ場がない「野生生物画」を学んで2003年に帰国。
日本でもイラスト提供や個展など開かれています。
ヒヨドリが大好きなので「ヒヨ吉」。

 

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