『アファンの森、いろとりどり』 ~ヤマドリ~ (2012年3月)

事務局日記

アファンの森を支援してくださっている皆様、たいへんお久しぶりです。ヒヨ吉です。

日英アファン野鳥図鑑作成のため2010秋から2011年6月までウェールズのアファン森林公園に滞在後、日本に帰国しておりましたが、私の個人的な事情により帰国後はブログ執筆を一時お休みさせていただいておりました。

また連載を再開致しますので、どうぞ宜しくお願いします。

 

 

昨年3月は黒姫の春の足音を聞くことができずにいましたので、今回の3月の訪問は、私にとって心躍るものでした。

現地につくと1m以上の積雪があり、私の住む関東との春の訪れの時間差を感じずにはいられませんでしたが、スノーシューで森の中に出かけると、まず足音から“雪国の春”を感じることができました。

 

真冬の雪の上を歩くと、「ギュ、ギュ」という雪の締まる深い音(宮沢賢治は「キック、キックと表現しますね。とてもセンスがいいと思っています」)がするのですが、春の雪の場合は「ジャ、ジャ」というちょっと軽い音がします。

これは、積もった雪の表面が気温の暖かい日に溶けてザラメ状になったことによる変化です。

野鳥調査で森に毎月入らせていただていた私は、この音を聞くと懐かしくて「ああ、黒姫にも春が来たなぁ」と感じます。

 

そんな雪景色の中を歩いていると、森を流れる水路から「ドドド」と大きな音を立てて飛び立った鳥がいました。赤茶色の大きな体に長い尾が見えました。

ヤマドリです。

ヤマドリ

 

 

 

 

 

 

 

ヤマドリ
Copper Pheasant

 

ヤマドリはキジの仲間で、地球上で日本にしかいない貴重な鳥です。

警戒心が強い上に、今では数も減ってなかなかお目にかかれない鳥になってしまっていますが、万葉集や百人一首などにも詠まれていることを考えると、おそらく昔は身近にたくさんいたのでしょう。

森に手が入らなくなり、木の実や草の実が少なくなってしまったことがヤマドリ減少の原因の一つと言われています。

アファンの森は、適度に人の手が入っていることで、ヤマドリによい環境が維持されていると考えられます。

 

ヤマドリは、地面を歩いて木の実や土壌動物などを食べるので、雪の多い黒姫で生きていくのはとてもたいへんだと思います。

地表のほとんどが雪で覆われている中で、水路沿いの地表面は彼らにとって貴重な採餌場所になっています。

 

飛び立った場所の周辺を注意深く見ると近くに足あとがありました。

どこからか飛んできて、

ここに着地して、こんなふうに歩いて、

ここに着地して、こんなふうに歩いて

残されていた足跡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなふうに水路に降りていったものと思われます。 

こんなふうに水路に降りていったものと思われます

水路へ続いていた足跡

 

 

 

 

 

 

 

ヤマドリは警戒心の強く、人の足音などを聞くとじっと身を伏せ、ぎりぎりまで近寄ってきたところでバッと飛び立つため、会えたとしても一瞬で飛び去っていく場面がほとんどです。

しかし、その場に鳥が飛び去った後でも雪の上に残された足跡からヤマドリの行動が見えてくると、寒さや風の冷たさなどを忘れてしまうほど森歩きが楽しくなってしまいます。

 

(ヒヨ吉)

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ヒヨ吉さん

現在、東京で仕事をする傍ら、アファンの野鳥調査に携わっていただいています。
小学生の頃から野鳥を観察していて、野鳥歴(?)は20年以上。
ニコルの手がけた専門学校の卒業生でもあります。
これまで調査や環境教育などに参画しつつ、野鳥のイラストも描かれていて、
2000年からは英国に留学し、日本では学ぶ場がない「野生生物画」を学んで2003年に帰国。
日本でもイラスト提供や個展など開かれています。
ヒヨドリが大好きなので「ヒヨ吉」。




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