アファンの森を支援してくださっている皆様、こんにちは、ヒヨ吉です。
日英野鳥図鑑作成のため、4月中旬の野鳥をスケッチしに、黒姫アファンへ行ってきました。
日陰にはまだ50cmほどの積雪が残る場所もありましたが、ほとんどの雪は融けて、ふきのとうやカタクリの芽吹きをたくさん見ることができました。
森が白い雪のコートから緑のドレスに着替えると、生き物たちも一斉に動き出します。
池からはアカガエルの声が聞こえてきますし、日当りの良い森の中ではテングチョウが元気に飛び回っていました。
そんな生き物たちが目覚め始めた森に、「キコキキョーキー」口笛のような尻上がりの声で鳴く鳥に目が止まりました。イカルです。
イカル
Japanese Grosbeak
(スズメ目アトリ科)
イカルは日本を始め、ロシア東部や中国、朝鮮半島、台湾などに生息する大きな黄色い嘴が特徴の鳥です。
以前「キョッピー」というキオスクのマスコットになっていたことがありますので、名前は知らなくても、こんな模様の鳥がいることがご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
黒姫アファンでは厳冬期のごく一部の期間を除いてほぼ一年中見られ、さえずりも四季を問わず聞くことができますが、私は今頃に聞くさえずりがとても好きです。
なわばりの確保や繁殖のパートナーへのメッセージが多く歌の中に含まれているのでしょう。
雪の上を通ってきたちょっとひんやりした空気の中だと、透き通るようなイカルの声もより遠くに伸びていくような、そんな気がしています。
さて、このイカル、生息に必要な環境条件が非常に絞り込みにくい、とても不思議な鳥なのです。
今まで紹介してきた野鳥たちは、例えば、地面、藪など、比較的「選択する環境」が調査をすることでわかってきているのですが、このイカルは、「この環境がないといなくなってしまう」という条件がはっきりしないのです。
経験的に比較的高木のある樹林が好きという傾向はあり、原生林のような環境や里山の林で姿を多く見かけますが、大きな河川の河原や都会の公園にも現れたりするのです。
イカルは木や草の種子を主食にしているため、おそらくさまざまな環境をまんべんなく広範囲に利用することで、自分たちの餌資源を枯渇させることなく生き延びるという戦略なのだと思いますが、もしイカルの数が減少し保護が必要になった場合は、具体策を立てるのがとても難しくなるという危険もはらんでいます。
いろんな環境を少しずつ必要として生きているイカル。
日本という地理の中に多様な自然があることと、それがどれをとっても大切な環境だと言うことを人間に教えてくれているのかもしれません。
日本の自然の多様性をしっかり守れているかどうか。それを確認するためにいろんな所を飛び回って確認しているのかもしれないですね。
(ヒヨ吉)
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ヒヨ吉さん
現在、東京で仕事をする傍ら、アファンの野鳥調査に携わっていただいています。
小学生の頃から野鳥を観察していて、野鳥歴(?)は20年以上。
ニコルの手がけた専門学校の卒業生でもあります。
これまで調査や環境教育などに参画しつつ、野鳥のイラストも描かれていて、
2000年からは英国に留学し、日本では学ぶ場がない「野生生物画」を学んで2003年に帰国。
日本でもイラスト提供や個展など開かれています。
ヒヨドリが大好きなので「ヒヨ吉」。