アファンの森を支援してくださっている皆様、こんにちは、ヒヨ吉です。
林内では、南の国から渡ってきたばかりのキビタキの雄たちが子育ての縄張りを確保するために、たくさんさえずるようになり、きれいな声がアファンの森に響くようになりました。
日英野鳥図鑑作成のため、GW明けに黒姫アファンにお邪魔しました。
先月はつぼみだったカタクリが既に結実していて、前回アファンに来た2週間前の様子とは、驚くほど季節が進んでいました。
今年の冬は雪が多かったことで林床から雪が消えるのが遅かったからでしょうか、いろんな辻褄を合わせるために春が駆け抜けていったような、そんな印象です。
春を通り越え、初夏を迎える準備に忙しいアファンの森でしたが、季節の変わり目ならではの出会いが今回はありました。
ムギマキです。
今回会ったムギマキは若い雄だったようで、成鳥(大人の鳥)に比べるとイラストのように色が薄い個体でした。
ムギマキ
Mugimaki Flycather
(スズメ目ヒタキ科)
ムギマキは春と秋に日本を通過する旅鳥です。
スズメより小さくて、キビタキによく似た格好をしていますが、喉から胸にかけてキビタキよりも濃いオレンジ色であることが大きな特徴で見分けるポイントです。
秋の渡りの時期には、ミズキやツルマサキの実を食べに来るので比較的出現ポイントが分かるのですが、春はそのような木の実がないため、なかなかその観察できるポイントが絞り込めません。
そのため、春にムギマキに会いたいと思うと、渡り鳥が通過する姿が見やすい日本海側の離島に出かけて探すのがほとんどです。
実は今回のアファン訪問前に北海道の天売島に行って見てきたばかりで、それが今年の春はムギマキとの出会いはおしまいだろうと思っていた矢先の出来事でした。
陸が続いている本州本土で、かつ森が広がる黒姫でありながら、アファンというピンポイントで出会えることはとても珍しいことだと思いました。
とてもラッキーな出会いでした。
しかし、周囲にはたくさんの「森」があるにも関わらず、なぜムギマキはアファンにきたのでしょう?
その答えは、餌となる虫が森にたくさんいるからでしょう。
「鳥が利用する森=虫がいる森=生き物がたくさんいる=森に生物多様性が確保されている」
ということを、実感した出会いでした。
ニコルさんと松木さんが始めた森づくりが、ムギマキのような長距離を移動する鳥たちに大切なものになってきているのは、野鳥とアファンの森が大好きな私には心からうれしいことです。
アファンは「生き物たちがすむ森」にするために長年手を加えてきた場所。
その重要性を今、生き物たちが証明しています。
(ヒヨ吉)
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ヒヨ吉さん
現在、東京で仕事をする傍ら、アファンの野鳥調査に携わっていただいています。
小学生の頃から野鳥を観察していて、野鳥歴(?)は20年以上。
ニコルの手がけた専門学校の卒業生でもあります。
これまで調査や環境教育などに参画しつつ、野鳥のイラストも描かれていて、
2000年からは英国に留学し、日本では学ぶ場がない「野生生物画」を学んで2003年に帰国。
日本でもイラスト提供や個展など開かれています。
ヒヨドリが大好きなので「ヒヨ吉」。