『いきものしらべ』 その8 麻布大学・野生動物学研究室より
調査研究麻布大学では生き物のつながり(リンク)をテーマに調査をしていますが、去年からは糞を分解する甲虫、つまり「糞虫」を調べています。
容器に砂を敷き、馬糞を一個入れて、そこに10匹のエンマコガネという小さな糞虫を入れました。
長さが7ミリほどの小さな甲虫です。
そしてときどき馬糞がどう分解されるかを観察しました。
馬糞は直径が5cmほどもありますから、人間にたとえれば教室とか体育館くらいあるはずです。
何日かかることやら、と思いながら調べたのですが、びっくりです。
4時間で少し形がくずれ、9時間経ったら糞はほぐれてしまいました。20時間経ったときは容器の底に広がってしまい、原型はもうありません。24時間後には敷きワラのようになっていました。
自然界では糞にもっとたくさんの糞虫が飛んで来ますから、ほんとうにあっという間に分解されるのだと思います。
ところで、この報告をご覧の人の中には「わあ、汚い、ウンコに来る虫なんて!」と眉をひそめる人もあるかもしれません。でも糞虫はまず見た目もとてもきれいです。
それに糞虫がいてくれるからこそ、森がきれいになるわけですから、汚いのは糞虫がいない森のほうです。そういう意味で、むしろ尊敬に値する糞虫たちです。
好きになってとはいいませんが、せめて「鼻つまみ者」という見方はやめてほしいなと思います。
こうした小さな生き物が偉大な仕事をしていることを示すことはとても大切なことだと考え、学生といっしょにひとつひとつ調べています。
(高槻記)
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麻布大学 野生動物学研究室の皆さん
高槻成紀先生が担当されている研究室で、いくつかのご縁が重なり2009年の6月からアファンの森での生き物の調査にご協力いただいています。
2010年3月には麻布大学とアファンの森財団が「学術交流協定」を締結し、一層の協力を進めることになりました。「森林管理が生き物のつながり(リンク)に与える影響を科学的に実証する」を全体のテーマとして、毎年学生が調査研究フィールドとして活動しています。
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