『いきものしらべ』 その10 麻布大学・野生動物学研究室より
調査研究麻布大学ではさまざまな生き物のつながりを調べています。
そのためのひとつで自動撮影カメラによる調査もしています。
森林によってそこに暮らす動物がどう違うかという興味で異なる林にカメラを置いていますが、落葉樹林においたものにオスジカが写りました。
7月上旬の午後なので、林に差し込む木漏れ日の中で自然な動きをするシカのようすが写りました。よく見ると頭に角があります。
シカの角は春に落ちて「袋角」と呼ばれるビロード状のつのがニョキニョキと伸びてきます。その袋角のようすで、これからどのくらいの角になるのかが推察できますが、このオスはかなり立派な角をもっていますから、間違いなく枝が4本で、長さは50cmを超える角になると思われます。
3年生の萩原さんはこの春からアファンの調査に参加しましたが、げっ歯類が好きなのでリスとオニグルミのことを調べることにしました。
7月の調査のとき商品のクルミを20個買ってきてアファンの森に置いてみることにしました。
実は去年の秋にも挑戦したのですが、ネズミの動きがすばやく、カメラが反応したときにはもうネズミは視野の外に出ているということが何度もありました。
それで反応のよいカメラを手に入れたのです。
7月14日の午後に置いてカメラをセットしました。
すると深夜1時12分にはさっそくアカネズミが現れました(写真1)。
ゴルフボールのように見えるのがクルミです。赤外線なので、画像は粗いし、少し違った印象に写りますがやむをえません。
翌15日の夜10時57分の写真にはネズミにしたら頭より大きいはずのクルミをしっかりくわえて運んでいるところが写っていました(写真2)。
こうして次第にクルミは減ってゆき、17日の夜8時には写真では5個しか確認できません(写真3)。
20日の午前3時には3個、22日の1時にはゼロになりました。
写真4はその直前の最後の一個をとりにきたアカネズミです。
断定はできませんが、訪れたのは同じネズミである可能性が大きく、そうであれば1頭が1週間たらずで20個を運んでしまったことになります。
これから落合さんが時間帯や減少の経緯などを解析しますが、カメラがちゃんとネズミの動きやクルミの減少過程をとらえることが確認できてよかったです。
それにしてもアカネズミ君、思わぬ季節にクルミのボーナス(これを棚からぼたもちという?)を「あやしい」とは思わないんですかね?速攻でした。
(高槻記)
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麻布大学 野生動物学研究室の皆さん
高槻成紀先生が担当されている研究室で、いくつかのご縁が重なり2009年の6月からアファンの森での生き物の調査にご協力いただいています。
2010年3月には麻布大学とアファンの森財団が「学術交流協定」を締結し、一層の協力を進めることになりました。「森林管理が生き物のつながり(リンク)に与える影響を科学的に実証する」を全体のテーマとして、毎年学生が調査研究フィールドとして活動しています。
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